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2005年04月22日

梅田望夫氏 FPN座談会レポート

日本のIT系BLOG界のファシリテイターとして昨年末までCNETでのブログ連載で活躍され、先日再び「英語で読むITトレンド」をはてなダイアリー上で復活なされた梅田望夫さんを囲んでのFPN座談会の模様をレポートします。
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■ブログとの出会い
Q: ブログでの情報発信を始めたのはいつ頃からですか?

UMEDA: ブログというスタイルで始めたのは2002年の10月。アメリカで”blog”という言葉を耳にするようになったころ、当時まだ日経BPにいた山岸くん(現GREE副社長、前CNET編集長)と話をしたのがきっかけ。それまでにも日経BPのサイトで連載を持ったりする中でウェブでの発信への興味はあった。ただ、いざ自分でウェブサイトを始めようとしても、面倒で三日坊主(笑)に終わったりしていた。そこに出てきたのが「ブログ」というツールだった。
 当初は山岸くんと話が盛り上がって彼が私の個人サイトを「blogger」で作ってくれ、そこに私の書いたものを上げはじめた。そして丁度山岸くんがCNETに移ることになり、彼の助けになればと思って引き受けたのがCNETでのブログ連載。実は当初は個人サイトもCNETでのブログも私が更新していたのではなく山岸くんに原稿を送って彼にアップしてもらっていたので、その意味では私にとってはCNETでのブログ開始は特別なことではなかった。

■読者との距離
Q: 従来から雑誌への寄稿はなされていましたが、”雑誌”と”ブログ”の違いはどこにありましたか?

UMEDA: 何より「読者との近さ」が衝撃だった。雑誌で書いているときには、何人の人が読んでいるのか、中身が伝わっているのか、いったい誰が読んでいるのかも分からなかった。ある意味編集者の声が全てという状態で書き続けなければならなかった。ところがブログを始めたとたん、まずアクセス数の動きが見えることで読者の評価が赤裸々に見え、全体で見れば少数だがトラックバックという形で読者の声が聞こえ、新たな文脈ができる。執筆が本業ではない私としては、今や雑誌で書くインセンティブは、編集者との間の信頼関係以外全くない。

■仕事の副産物だから続いた
Q: ブログを始めたコンセプトはどういったものでしたか?

UMEDA: CNETの連載が始まるまでのブログではプライベートのことなども書いていたわけだが、私が他の人のブログを読んでいて正直個人的なものを面白いとは思えなかった。そこで「テーマ性を持とう」ということで、どんなものが読まれて書き続けることができるかを考えた末に出てきたのが『英語で読むITトレンド』というテーマだった。結局、自分が10年間続けてきた仕事の延長であり、副産物でやっていくのが一番長続きするという結論。

Q: CNETでのエントリー1本を書くのにどれくらいの時間をかけていましたか?

UMEDA: 約1時間程度。基本的には朝起きてすぐに書いていた。起床は4:30~5:00頃。目覚まし時計で起きるのではなく自然に起きられるように6時間は睡眠時間を取っている。ちなみに、日本は夜が楽しすぎるからムリ。シリコンバレーは野球を見終わったら夜はおしまいだから(笑)。

■10代の頃の自分に向けて
Q: ブログを書くときの読者・ターゲットは?

UMEDA: 若い人、イメージとしては「10代の頃の自分」。背伸びしたくて、既存のモノはいやで、英語が嫌いな(笑)。英語については、自分が10代の頃には興味の持てる英語の本を読む機会がまったく無かったことが残っている。だから興味を持てるもので英語を学べるようなものにした。ちなみに私の感覚では、CNET連載時に英語の引用を読んでいた人は10人に1人、リンク先の原文を読んでいた人は1000人に1人だったと思うが(笑)。

■ネットの向こう側の人達はすごい
Q: CNET連載時は他のブログのコメント欄が荒れることもある中、梅田さんのコメント欄のさばきは上手かった印象がある

UMEDA: コメント欄にはかなり気を使った。読者が1万PV/日を超えると雑音が増えてくる。しかし、自分が間違ったことももちろんあった。例えばアップルのネタを書いたときに中途半端な知識をエントリーすると、そこにはスティーブ・ジョブスと会ったことのある人もいればアップルと長年取引をした経験のある人もいて、彼らからすれば「こいつはわかっていないな」ということが見えてしまう。それが見えれば当然彼らはきついコメントを書きたくもなる。そういったことがあって、「ネットの向こう側の人達は実はすごい」のだということを知り、その後は自分で自信のないものは書かなくなった。それが「ブログ」の書き手として本当にいいことかどうかはわからないけどね。

■CNETはブログをやるべきではない

UMEDA: CNETでの連載を経て、日本ではCNETのようなオンラインメディアのことも「権威」だと思っている人がたくさんいることを知った。そういう意味でも私は「CNETはブログをやるべきではない」と思っている。メディアは完全を目指すべきで、コンテンツには最終責任を持つべきものだ。翻って個人ブログは間違いもOKとされる世界だ。その二つの間は明確に分けておく必要はあると思っている。

■本質はコンテクスト
Q: ブログをやっていることで本業のビジネスへの影響はありましたか?

UMEDA: 書き始めた当初は「ブログを読んでいるからコンサルティングはいりません」というような人が出てくるのではないかと恐れたこともあったが、その点は全く心配不要だった。ブログを読んでくれている人と話をすると自然と話が深くなり濃い議論ができる。ブログもコンサルティングもそうだが、コンテンツが商売ではなくてコンテクストに本質がある、ということを改めて感じた。ちなみに、ブログを見てコンサルティングを依頼してきた人はまったくいない。それは雑誌で書いていたときも同じ。自分の商売を売り込もうと思ったら書いた上でちゃんと営業をしないとね(笑)

■いい歳になって、「何をやっていると幸せか」を思い出した
Q: ブログを続けるモチベーションは?

UMEDA: 経済的なものではまったくない。私は昔から大学の先生になりたかった。いい歳になってブログを始めてそのことを思い出し、「何をやっていると幸せか」を思い出した。大学で本当に教えることも考えないではないが、大学ではどうしてもクローズドに
なってしまってつまらない。今の状況はブログを通じて「バーチャル研究室」を持っているようなものだから。

■本当の自由競争

UMEDA: インターネットの本質は「オーソリティって何だ?」の答えを作り直すことだと思う。例えば新聞を例にとれば、40ページの紙面を100円で買うという表層の姿は簡単にはなくならないと思うが、その紙面の中身(コンテンツ)の価値は大きく揺るがされている。新聞でモノを書くということは学歴や新聞社の社内競争を乗り越えてきたということによって権威付けされている。その権威を得ることはもちろんとても難しいことなのだが、実は「ネットの向こう側の膨大な知」との軋轢を起こしている。ネットの中というのは激しい本当の自由競争、かつ継続競争の世界であって、その中で最前線でい続けようとしても2年がいいところ。既存メディアでの書き手はシステムによって守られているが、インターネットは旬な人を見つけ出すシステムが絶えず機能している。私がインターネットを「消費者天国、供給者地獄」と表現する所以だ。
 私のブログは”オープンソース”のような存在であり、それは趣味だから継続することができる。しかし本当にインターネット周りの書き手として食っていこうとしたらそれは並大抵のことではできない。そこにGoogleのAdsenseの存在がある。

■近藤についていこうと思った
Q: はてなの取締役就任のニュースは日本のブログ界を大いに賑わせました。

UMEDA: はてなの魅力は社長である近藤の魅力だ。とにかく何を考えているかが、よくよく詳しく聞いてみないと、なかなかわからない。「世の中にこんなことを言う人がいるとは知らなかった」と思わせるようなことを平気で言う不思議な男だ。はてな自体はコミュニティを大事にして「人間を信じる」という思想を持った会社で、それが本当に通用するかどうかはまだわからないが、私はこの全く新しいことを考えている近藤についていこうと思っている。

■オープン、Webサービス、アフィリエイト
Q: 今後のインターネットビジネスの展望など

UMEDA: キーワードは、”オープン””Webサービス””アフィリエイト”だと思う。Webはオープンであることが大前提。例えばアスクルは注文をネットで受け付けているが会員制で原則クローズドになっているのでは。この形ではGoogleにインデックスされることもなく、アフィリエイトで客を呼び込むこともできない。これからはグレーな部分を残すことなく全てオープンにしていくことだと思う。

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この他にもオフレコで語ってくれたUSと日本の経営思想の比較論など、たいへん有意義な議論で盛り上がった座談会でした。
梅田さん、ありがとうございました。

■関連記事
 ・My Life Between Silicon Valley and Japan
 ・CNET 渡辺 聡
 ・キャリアコンサルタントのひとりごと。


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